
今までは、ミルクの時間が爪切りの時間でもあった。
僕が哺乳瓶を持って、奥さんが小さな指先をつまむ。愛息はミルクを飲んでいる間だけ驚くほど従順で、その隙に爪を切るのが我が家のやり方だった。
以前は1日に1000cc以上飲んでいた。哺乳瓶を洗っても洗っても追いつかないくらいだったのに、今では朝と寝る前の100ccだけになった。残りは離乳食で足りている。
成長。
たった2文字なのに、生活の手順を静かに書き換えていく。
ミルクの回数が減ると、当然ながら爪を切る機会も減る。便利だった仕組みが使えなくなって、僕たちは新しい方法を探さなければならなくなった。
それで今日は、ママに抱っこされて眠っている愛息の爪を切った。
老眼の僕は眼鏡をかけたり外したりしながら、指先と爪の境目を何度も確認する。眼鏡をかけると全体は見えるけれど細部がぼやけて、外すと今度は顔を近づけすぎてしまう。自分でも少し滑稽だと思う。
しかも、眠っているはずなのに、ときどき指がぴくりと動く。
そのたびに僕は呼吸を止める。
奥さんは横から「大丈夫、大丈夫」と監督みたいに指示を出してくれる。その助言のおかげで、思ったよりも上手く切れた。
こういうことは、子どもが大きくなれば自然になくなるものだと思っていた。でも実際は違う。
何かが終わるたびに、別のやり方が始まる。
ミルクをたくさん飲んでいた頃には、その時なりの大変さがあった。今は今で、新しい不便さがある。でも、その不便さに少し手間取りながら慣れていくこと自体が、子どもと一緒に成長しているということなのかもしれない。
爪切りの方法が変わっただけなのに、ひとつの時代が終わったような気がした。
哺乳瓶の向こう側へ行ってしまった愛息。
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