ミルクのない荷物

愛息と出かけるとき、僕はいつも戦場へ向かう兵士みたいな気分になる。

ミルク、オムツ替えセット、離乳食、赤ちゃん用のマグカップ etc… etc…。出発前には何度も荷物を確認する。鍵や財布を忘れるより、そちらのほうがずっと重大なミスに思えるからだ。

忘れ物はないか。

その確認を繰り返しながら、いつの間にか僕の鞄は膨らんでいく。

でも今日、ふと気付いた。

ミルクを持ってきていない。

忘れたわけではなかった。持ってくる必要がなくなったのだ。

卒乳が近付いて、愛息はもう以前ほどミルクを欲しがらない。だから自然と荷物から消えていた。

それだけのことなのに、少し立ち止まってしまった。

成長したんだなと思う。

ほんの数ヶ月前までは、ミルクがなければ外出なんて考えられなかった。泣けば飲ませて、飲み終われば安心して。僕たちの行動範囲は、次の授乳時間を中心に回っていた。

それが今では、ミルクの存在そのものが薄くなっている。

嬉しい。

でも、嬉しいだけではない。

子どもの成長を喜びながら、その前の姿に会えなくなることを惜しんでいる自分がいる。

外出先のベンチでミルクを飲む姿。

両手で哺乳瓶を抱える姿。

飲み終わって満足そうな顔。

それらは特別な出来事ではなかったはずなのに、気付けばもう終わりかけている。

子どもは毎日少しずつ変わっていく。

昨日まで当たり前だったものが、何の予告もなく最後になっている。

今日持っていかなかったミルクは、荷物が1つ減ったという話ではなくて、愛息がまた1歩先へ進んだという話だった。

そのことが少し誇らしくて、少しだけ寂しい。

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