愛息という最新刊

昔の僕は、漫画が好きだった。好きだった、というより、かなり執着していたと思う。

新刊を買った日は、それだけで1日が特別な日に変わった。布団に入ってから「少しだけ読もう」と思ったはずなのに、1巻から読み返して、気が付けば窓の外が白んでいる。徹夜なんて大げさな言葉じゃなくて、ただ漫画を読んでいたら朝になっていた、という感覚だった。

ページをめくるたびに先が気になって、登場人物の一言に勝手に傷ついたり興奮したりする。自分の人生よりも、漫画の続きのほうが重要に思える瞬間さえあった。

でも最近は違う。

好きな作品を開いても、昔なら一気に読み切っていたはずの漫画を、何日もかけて読んでいる。

つまらなくなったわけではない。たぶん。

ただ、あの頃みたいに物語の中へ潜り込めなくなった。漫画を読んでいるはずなのに、頭のどこかで現実の生活がずっと順番待ちをしている。

子どもが産まれてから、興味の向く先が変わったのかもしれない。

新しい必殺技よりも、新しい寝返りのほうが気になるし、主人公の成長よりも、愛息が昨日できなかったことを今日できるようになったほうが大事件だ。

そんなことを考えると、自分が少しだけ大人になったような気もする。でも同時に、徹夜して漫画を読んでいた頃の自分を裏切ってしまったような気もする。

まあ、その頃の僕だって、今の僕を見れば「そっちのほうが面白そうじゃん」と言うかもしれないけれど。

今はまだ、漫画よりも気になるものが家の中にいる。

だから無理に昔へ戻ろうとは思わない。

ただ、愛息が眠ったあと、久しぶりに夢中になってページをめくり続ける夜が、いつかまた来るのだろうかと考えることがある。

少しだけ懐かしい気持ち。

コメント

タイトルとURLをコピーしました